日曜日の朝日新聞に、けっこう長く続いている、『天才の育て方』というコラムがあります。
有名人の親に、どのように育てたのかを取材したもので、4回続きのコラムです。共感するものもあれば、苦々しく思うものもありですが、興味があるので毎回読んでいます。
今回は、クラシックギタリスト村治佳織さんの『育て方』ということで、ギタリストの村治昇さんが三回目の登場です。前回までは、まだ佳織さんが小学校に上がる前までの指導法についてで、まず遊び感覚で、ご褒美も用意しつつ、楽しくレッスンしていたということが書かれていました。
今日は、小学校に入ってからの様子です。
【毎朝、「今日の練習メニュー」を書いて出かける。学校から戻った佳織は、そのメニューを自分でこなす約束だった。
音階練習○回、アルペジオ奏法の練習○回、曲○回・・・。
友だちと遊んでしまい、練習をさぼった翌朝。
「なまけ虫がお尻から入ったな」
昇は平手で思い切りお尻をたたく。 ー略ー
「練習をしなくちゃ上手になれないことや、約束をやぶっちゃいけないことが、わかり始めた年齢。だからこそきつくしかりました。自尊心を傷つけないために、本人ではなく虫のせいにして」
勝ち気な性格を逆手にとって、こんな方法をしたこともある。
「北海道にマリちゃんというギターのうまい子がいる。佳織より3ページ前を練習しているんだって」と昇がいう。すると佳織は、マリちゃんに負けまいと猛練習する。もちろん「マリちゃん」なんていない。でも、佳織は本気で張り合った。】
こういうふうにして培われてきた力って、音楽に、どのように反映されるんだろう・・・。
小さい頃から「天才」と呼ばれてきた人の多くは、こんなふうな家庭教育なのかなあ。
そうえいば、五嶋みどりさんのお母さんも、スパルタだったと聞いたことがあります。
私、昨年秋頃、ヴァイオリニスト天満敦子さんのコンサートに行って、すっかりファンになってしまいました。その後、CDを買ったり、本を読んだりしましたが、天満さんのお母さんは、スパルタとはほど遠いかたで、とても面白かったです。
天満さんが小学六年生のとき、NHKの「ヴァイオリンのおけいこ」という番組にでて、半年間その番組のなかで、超一流の先生にレッスンを受けられることになったそうです。その収録のときの話しが印象的でした。
【収録が始まってびっくりしたのは、他の子供たちはヴァイオリンのケースもお母さんが持つの。それからケースを開けて弓の毛を張って、松脂を塗って、ー略ー 準備するのは全部お母さんなの。楽譜を開いて「今日はここよ」なんてやってる。それを見て私たち親子はまたビックリした。だってママがヴァイオリンを持ったことなんてなかったし、それは死ぬまでなかった。
それで先生のご注意をお母様方が自分の譜面に書き込むわけ。それで今度はママが慌てたの。かわいそうに他のお母様方の真似をしたんだけど、音符をよめないから、ママが見ているとこと皆が見ているところは全然違う。 ー略ー
それで、そういうことをするのは、一回でやめちゃった。では何をしたかというと編み物をよくやってた。 ー略ー
それでママは「ヴァイオリンのおけいこ」に私がでていた半年の間に、スーツを編んだの。グリーンのこま編みのすごくいいスーツをスタジオの隅っこに座って六ヶ月かけて編んだ。 ー略ー
慣れないことはさっさと止めて、スーツを編んじゃったあの時、ちょっとうちのママ、誇らしかったな。】
この話しは、コンサートに行ったあとに読んだのですが、こういう家庭で育った伸びやかさが音楽に現れているような気がしました。そして、ヴァイオリンが大好き!演奏できて幸せ!、という空気が伝わってくるのです。
『天才の育て方』の話しに戻りますが、棋士、羽生善治さんのお母さんの話しが好きでした。
羽生さんは中学三年でプロになったのですが、家族が、「せめて高校くらいは」とすすめて都立高校に入学しました。そのことを、お母さんは後悔しているそうです。
【義治には、好きなことを好きなだけやらしてあげるべきだったかもしれません。本人はずっと早い段階から、将棋一本、と決めていたわけですから」
いいお母さんだなあ。
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