子どもの村ブックレット
今、私の手元には、『教育改革は体験学習からー子どもの村のプロジェクトの事例と考え方』というブックレットがあります。きのくに子どもの村学園が昨年11月に出版し、続編も、現在製作中だそうです。
薄いのであっという間に読めてしまいますが、中身は濃いです。
私が持っているのはNo.2で、5章からなっています。うち、2章は学園長の堀真一郎氏が書き、あとの3章は、三人の教員が、それぞれの担当したプロジェクトの活動について述べています。
第4章の『九頭竜川の研究』というのは、かつやま子どもの村学園の中学生たちが、「水の研究センター」というプロジェクトの中で一年間取り組んだ活動です。一年を通じての、子どもたちの成長ぶり、大人の暖かい配慮とまなざしに、何度もじ〜んとしてしまいました。
このプロジェクトでは、ミーティングの末、福井県を横断する九頭竜川の研究を中心とし、その中でも、「九頭竜川の模型づくり」「川の生物の飼育」「九頭竜川通信の発行」の三つが主な活動となりました。
きのくに・かつやまのプロジェクトは、体験を中心にすえた総合学習ですが、単に「体験する」ということではなく、大人(教員)が十分考えた、ねらい、があるのです。
きのくに・かつやまの教育理念は、「子どもたちが、感情的にも知的にも社会的にも、自由な人間に成長するのを援助する」ということなのですが、この理念に沿って考えられているのです。
「感情的側面」について抜粋します。p.57
【九頭竜川は学校から車で15分ほどのところにある。九頭竜川にかかわる問題は、中学生の身近にあり具体的である。大人の直接的な指導が少なくても、中学生が自分で発見したり考えたりしやすい。また、模型づくりや生物の飼育は、成果を自分で確認できる。
失敗したときは、大人から叱咤や注意をされなくても、活動自体が教えてくれる。意図的でなくとも、子どもの行動に対する大人の過度な批判的・否定的な発言は(そして、ときには褒慰的な発言も)、しばしば、子どもの人格の批判や否定につながる。少なくとも、子どもにはそう感じられることが多い。
こういった大人の側からの介入が少なく、失敗する権利が認められ、自分自身の考えや行動が存分に尊重される環境は、中学生を緊張や不安から解放するはずである。それにくわえて、実際に起きている本物の問題に取り組んでいるという実感は、中学生の自信になるだろう。
ついでにいえば、水にじかに触れる活動は、それだけでも十分に値打ちがある。水遊びをする、プールや海で泳ぐ、風呂につかる、といった営みは常に人々の身近にある。これは、水には、人を緊張から解放し、安らぎを与える力があるからである。身近な川にかかわる活動は、頻繁に水にふれる活動であり、それは中学生の心理的な解放につながるはずである。】
長くなるので、知的側面についてのねらいは省略して、「社会的側面」についてのところを抜粋します。p.58
【自分たちでたてた共通の目的は、ひとりの力では達成できない。本格的に模型をつくったり、川の調査をしたりするには、目標の共有とお互いの協力が必要である。
中学生たちは、これらの活動をとおして、表面上の協調や見せかけの優しさではなく、実際的に有用な協力のしかたを身につけていくはずである。そして、特定の子と仲良くしすぎたり、憎み合ったりせず、適度な距離をもった成熟した人間関係の基礎をきずいていくにちがいない。
また、共同作業のなかで、他人とのかかわりを多く経験する子は、自分自身をしっかり意識できるようになるに違いない。】
こんなふうに考えてくれている大人がいる学校って、なんてすてきなんでしょう!
実際の活動の様子では、本づくりの原稿について、こんなことが書かれています。p.68
【ところが、12月の最後のしめきりになっても、原稿の提出が間に合わない子がいた。計画的に取り組んでこなかっただけではない。話し合って、自分が書きたい内容を受けもっている。最後までこだわりたいのだ。けれども、二学期もあとわずかで、時間が足りない。本の完成を三学期に延ばそうか、という意見も出た。しかし、これには、原稿のしめきりを守ってきた子たちの多くが反対した。
プロジェクトの時間だけでなく、すべての休み時間をつかって、なるべくはやく間に合わせてほしいと、厳しい意見だ。それにたいして、普段はおとなしくてあまり意見をいわない三年生の男の子がこういった。
「休み時間をつかって自分でできるような人であれば、しめきりまでにしあげてくると思う。周りのみんなも声をかけてあげるとか、手伝ってあげるとかして、全員でその子たちの原稿を終わらせるように協力したほうがいいと思う。」
この子も、一学期から何かと原稿の提出に遅れてきた。二学期の半ばにもなると、見通しをもってとりくみ、しめきりを守るようになってきたが、間に合わないときの心境をよくわかっているのだろう。文字を書くのを苦にしない子からは出てこない意見だ。】
この深い洞察!子どもの発言を、こういうふうにキャッチできる大人がいる学校なら、親は安心して任せられますよね。
そして、さらにじ〜んとしてしまった最後の部分。p.79
【「九頭竜川の研究」にとりくんだ一年間をふりかえれば、16人の中学生は確かに成長した。けれども、学校が、子どもたちが幸福で自分自身の生き方をする人間へと成長する場であるというならば、この子たちがどんな大人になっていくのかを、これからも気にしていきたい。難しいことだが、その成長していく姿をふまえたうえで、この「九頭竜川の研究」の一年を再び見直し、次なる「九頭竜川の研究」にとりくみたいと思う。】
他の部分も、他の章も、ほんとうにすてきな子どもたちと大人たち、学校の姿が描かれています。息子たち、こんなふうに育まれてきたんだなあ、と思うと、ほんとうに幸せです。
続編も、楽しみだなあ。


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