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2008年2月20日 (水)

霜田静志氏の文章

【よく言うことをきく子。これが今日までどこでもよい子とされている随一であろう。親たちは二言目には、どうもこの子は言うことをきかないで、という。永年教育相談の仕事をやって来て、私がいつも親たちから訴えられるのはこれである。

だが果たして言うことをきく子が何でもかでもよい子であると言うことができようか。言うことをきく子がよい子であると考えている人も、もしわが子が、見知らぬ人にうまく言いくるめられ、その人のいうことをきいてついて行って、そのために災難を受けたということになったらどうであろう。 ー略ー


言うことをきく子どもをよい子とする考え方に立って行ってきた従来の日本の教育はどういう結果になったであろうかを考えて見るとよい。ちょうど前述の見知らぬ人の口車にのったと同じことが、国全体として行われたのである。


明治以来の一環した教育精神によって、日本人は皆、上の者のいうことにはいつも絶対服従で、言うことをきくようにと教育されて来た。

欧米の新しい考え方にふれて、そんな盲従はいけないと、これに反対する意見を出す者もあり、一部これを実行に移したものもあるにはあったが、大勢はどうすることもできなかった。日本人全体は依然として上の者のいうことなら何でもかでも無批判に受け入れるという状態であった。


そうした日本人は、遂に誤れる指導者の導きに従って太平洋戦争に突入し、日本を今日のような悲惨のどん底におとしいれてしまったのである。

ドイツの民謡、ハメリンの笛吹きは、笛吹きの笛の音に踊らされて鼠の大群がことごとく川に落ちてしまう話しであるが、今の日本人は全くこの話しのように哀れなものである。


「言うことをきく」バカバカしさを恐らく日本人ほど骨身にこたえるほど痛感したものはないであろう。それなのに今日でもなおかつ、ともすればすぐ人の尻馬にのって騒ぐ連中、一人の扇動者にあおり立てられると、いい気になって騒ぎだす群衆が、あちこちに見られるのは何といっても情けないことである。

永年の教育というものは恐ろしいものである。日本人をこうまで自主性のない、個性のない、付和雷同的な人間にしてしまったのである。】 

ー『霜田静志復刻選集 第1集』より


霜田静志氏は、A.S.ニイルの著作を翻訳し、日本に広めたかたで、きのくに子どもの村学園の堀真一郎氏の恩師でもあります。


上記の文章は、霜田氏が昭和24年に創刊した『愛育通信』の文章をまとめたものです。

戦争中には、「自由教育」などと言ったら大変なことになるので、「叱らぬ教育」と表現を抑えて文章を書かれていたそうです。

復刻選集には、心から賛同できる文章がたくさんです。少しずつこちらで紹介していきます。

でも今、日本の教育の現状には、とても不安を覚えます。せっかく霜田氏が心を込めた書かれたことが、一人でも多くのかたに伝わって、価値観の大きな転換につながれば、と思うのです。


それと、先日95歳の映画監督、新藤兼人氏の原作、脚本、証言による、『陸に上がった軍艦』という映画を見てきました。都会では昨年中に上映がすんでいるようですが、地方は今頃です。

http://oka-gun.com/

多くのかたに見ていただきたかったな、と思いました。

今日は長くなったので、この映画のことは次回に書きます。
ホームページご覧ください。

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コメント

まみさん
素敵な文章を教えていただき、ありがとうございます。
さすが日本における自由教育の先駆者霜田さんですね。堀さんの著作を通じて想像していた通りのお考えを持った方のようです。
いまの学校の方針はPISAでの成績低下などを受けて(成績自体はそれほど極端に低下していないと思うのですが)「考える力をつける」とは謳っていますが、そうでもないように感じます。
「心のノート」(←道徳副教材です)のことを調べたりしていると、教育学者の方が「考えずに従う人を作る」と批判していますが、本当にその方向が強いように思います。
上の人の望むように考えるのではなく、本当に自由にのびのびと考えて、自分の持っている個性がキラキラと輝くような教育になってほしいです。

投稿: まい | 2008年2月22日 (金) 17時37分

まいさん、読んでくださってありがとうございます。霜田氏は、文章を読めば読むほど、すばらしい教育者だったことがわかりますが、『復刻選集』は非売品だしニイルの本も書店で見かけることがとても少なくなりました。はがゆい思いです。

『心のノート』、登場したときから「なんじゃこりゃ〜」と信じられない思いでしたが、まだ教材として使われているんですか?

以前、岩波ブックレットNo.595、三宅昌子氏の『心のノートを考える」という本を読みまして、だいたいの内容も知りましたが、その押し付けがましさに、建前ばかりのきれいごとに、辟易としました。こんな本で「心」を教育しようなんて、気持ち悪いです。

投稿: mami | 2008年2月24日 (日) 22時52分

まみさん、お返事ありがとうございます。私も三宅晶子さんの「心のノートを考える」を読みました!本当にあの押しつけがましさには唖然、呆然です。ほんものはネット書店で注文できるようですが、どうしようかなあ〜と迷っています。心のノートはずっと現役のようです。先生によって使用のしかたは違っているようですが、どこかのHPによれば、きちんと使用させようという動きがあることも読みました。

ところで、私のブログにいただいたまみさんのコメントにお返事を書いたのですが、So-netブログが不調のようでメインテナンスに入り、そのコメントもいったん載っていましたが、いま見ると消えていました。たいへん鋭い視点でとても参考になりました。ブログが復活したら再度お返事しますので、よろしくお願いします。

投稿: まい | 2008年2月25日 (月) 20時16分

三宅さんの本、まいさんも読まれたんですね。ほんとにうんざりですよね、あんな本作るなんて。百害あって一利なし!ホンモノも見てみたいけど、買うのもしゃくだし・・・。
私、あれを監修したという河合隼雄さんが、ダイッキライになりました。

投稿: mami | 2008年2月29日 (金) 22時27分

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