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2007年8月25日 (土)

ハートボイス

【岡崎がまだ小さいとき、

「徹は、大きくなったら何になりたい?」と、おじいさんに聞かれた。

「ぼくは、お医者さんになりたい。」と答えた。
おじいさんは大よろこびした。お医者さんはおじいさんの夢だった。小さい岡崎には、自分の夢とおじいさんの夢の区別がつかなかった。お父さんもお母さんも、岡崎の夢に夢中になった。

岡崎は、自分の夢が見られない・・・。

長瀬先生や吉岡先生との出会いは、岡崎の殺していた自我を目ざめさせた。何よりもテストの結果を優先する、自分の家族の生き方に疑いを持ちはじめた。かくれて読んでいたマンガを取りあげられ、食事の時間まで制限される生活に、とうとう岡崎は切れた。

「二日まえ、ぼくは家出をしたんです。でも、遠くに行く度胸はなくて、結局、近くの本屋さんとコンビにで、時間をつぶしました。そのうち、お父さんに見つかって、家に連れもどされて・・・。お母さんがぼくにいったことばは、『四時間のロスタイムよ。今日はねないで取りもどすのね。』それだけだった。ぼくの決心なんて、だれも本気にとってくれなかった。」

ー中略ー

「もう、家には帰りたくない。だれの顔も見たくない。これ以上何かいわれたら、ぼく、お母さんを殺すかもしれない。」】


この文章は、『ハートボイス』という小説の一部です。最近起こった、16歳の男子がおじいさんを殺害した事件を思い起こさせます。

著者は青木和雄氏。心理学を専攻し、教育委員会、小学校校長などを経て、現在は教育カウンセラーをしておられます。

他の著書に、『ハッピーバースデー』『ハードル』があり、いずれも子どもたちが悩み葛藤しながらも、心から信頼できる大人や友人と出会って、力強く立ち上がって行く姿が描かれています。

登場人物の言葉がすばらしくて、胸にずんときて、特に『ハッピーバースデー』を読んだときは、号泣してしまいました。「こんな話しをしてくれる大人と出会いたかった」と思ったのです。


また、カウンセラーとしての事例をとりあげた、『HELP!ーキレる子どもたちの心の叫び』では、いじめ、虐待、少年犯罪などを取りあげ、押さえつけられて来た子どもたち、また、未熟なまま大人になってしまった親たちの様子が書かれています。


これらの著書を読むと、青木氏は、子どもの心がわかっているかただなあ、と思います。小、中、高生の読者が多いのもうなずけます。彼らはきっと、青木氏の本のなかにでてくる、すてきな大人たちに出会いたいと思っていることでしょう。


子どもや孫に、「難関大学にはいってもらいたい」とか「医者になれ!」とか言っている大人にこそ読んでほしいけど、読むわけないでしょうね・・・。

事件が起こるたび、そしてその背景を知るたびに腹立たしく、やりきれない思いがします。

人を殺していいわけはないですけど、人の心を殺すのは、なんの咎もないんでしょうか?

おじいさんを殺してしまった16歳に、共感を覚える少年少女がたくさんいるでしょう。

私自身、親を殺そうとまでは思ったことはありませんが、「いなくなってほしい」とは思ったことがあります。もしあの頃、青木さんの本に出会っていたら(当時はまだ出版されてませんが)、きっとつらい思いをしたためた手紙を送ったと思います。


背後霊のようになって、子どもを管理支配する親たちには、どうか、青木さんの本を読んでみてください、と懇願したいです。


作者あとがきから少し転載して、今日のところは終わりにしたいと思います。


【ある中学を訪問したとき、「うちの学校には、いじめはありません。生徒たちには、自分の進学のことだけ考えるように指導しています。友だちと関わらないようにすれば、いじめも起きませんから」といった教師がいました。わたしが、子どもたちの「ハートボイス」を、本に書こうと思ったきっかけにもなる、重いことばでした。

ハンディキャップ、国籍、性別、家庭の事情など、子どもたちは、さまざまな重荷を背負って生きています。異質なものを排除するのではなく、尊重するやさしさは、友だちと関わらなくては学べないと思うのです。「いじめ」解決の道は、子どもたちが深く関わり、考えを語りあい、おたがいを理解する過程にこそあるのです。

ー中略ー

学校が変われば、子どもも変わり、親も変わります。そして、社会も大きく変えていきます。多様化した価値観に巻きこまれ、学校が大きくゆれているように思えます。方向を見失わないようにと祈る思いで、この本を書き上げました。子どもたちにはもちろんのことですが、おとなの方がたにも、ぜひお読みいただきたいと思っています。】

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