« きのくに中学校卒業後ーその2 | トップページ | ヴァイオリニスト 川畠成道さん »

2006年5月11日 (木)

進路を決めるということ

きのくにでは普通の進路指導はいっさいありません。

【学校が持っている情報はいつでも提供する。相談にもいつでも乗る。しかし普通の学校のような進路指導は一切しない。進路は、自分で探して決めなければならない。その準備も自分でしなくてはいけない。】   ー『自由学校の設計』よりー

試験がないから、偏差値を割り出してそれをもとに「はいれる高校」をすすめられることもありません。授業中も「試験にでるから覚えておけ」というような指導はないので、子どもたちは興味に応じて生き生きと学ぶことができるのです。「進路説明会」なども開かれません。

きのくにのこの方針は、とてもすばらしいことです。自分の中学生の頃を思い出すと、いつもテスト、模擬試験、偏差値が頭にありました。そして、進路、といえば、「偏差値がこれくらいだからこの高校に入れる。」「この偏差値ではちょっとあぶないから、高校のランクを一段階落とそうかな。」というような問題でしかありませんでした。

長男(以下F)は、中学二年生になってしばらくして、「俺、きのくに卒業したらどうしようっかな〜。ギターもやりたいし、サッカーも好きだし・・・。」と言うようになりました。私は、「ふむふむ、悩みだしたのね〜」と心の中でにんまりしつつ、「そうねえ、どうするかねえ。」と答えていました。

その秋、あるコンサートに行ったとき、終わってから、「俺、音楽でやっていくわ」とぽつりと言いました。

中三の夏、とてもフィーリングの合うギタースクールを見つけて、アコースティックギター一本だったのが、クラシックギターも始めることになりました。「先生に習うとうまくなる気がする。」「クラシックギターって奥が深いんやな。」と、クラシックギターの魅力に開眼。

結局中三の11月くらいまでに、卒業後はギタースクールでギターの修行をするのを第一に考え、高校資格は単位制高校の通信でとる、ということに決めました。

最終決定する前に、この選択でほんとうにいいのかな、と私は少しの不安があったので、「ほんとにもうギター1本、って決めちゃっていいいの?」と行ったら、「俺は、自分のためだけにギターやりたいっていうわけじゃないよ。」と言ったのです。

彼はきのくにで、ギターソロの発表を何度かさせてもらったことがあるのですが、そのとき、きのくにのスタッフから、「すごく癒されて、花粉症が治ったよ!」とか「また弾いてね」と言われ、人が喜んでくれる喜び、を感じたようです。寮母さんに「Fくん、ちょっと疲れちゃったから、ギター弾いてくれない?」などと言われたこともあったそうです。それを聞いて、「俺のためだけにギターをやるわけじゃない」という言葉の意味が理解できました。

「ああ、この子はほんとうにギターが好きで、それで人に感動を与えられたらいいな、って思ってるんだな。純粋な気持ちなんだな。」と、Fの気持ちがよくわかり、それで私の気持ちもどっしり落ち着き、迷いはなくなったのです。

多分、普通の中学校に行っていたら、親がいくら子どもに好きなことをさせたい、と思っていても、迫ってくる試験、三者面談、偏差値、の嵐に巻き込まれて、結局は点数でFの進路を決めていたでしょう。そもそもギターに出会っていたかどうかもわかりません。

「進路指導しない」、これはとても幸せなことだったと、心から感じています。

最後に、再び『自由学校の設計』からの抜粋を少し載せておきます。こういう考えたかの大切さに、多くの大人が気づいてほしいと、願っています。

【きのくには、自分のことは自分で決める学校だ。そして進路こそは自分で決めなくてはいけない最も大切な問題だ。どんなに苦しくても、自分で考え自分で選択しなくてはならない。そして実際、きのくにの中学生たちは、苦しい思いに耐えて、自分の進べき道を選んだのである。】

|

« きのくに中学校卒業後ーその2 | トップページ | ヴァイオリニスト 川畠成道さん »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/175659/10013049

この記事へのトラックバック一覧です: 進路を決めるということ:

« きのくに中学校卒業後ーその2 | トップページ | ヴァイオリニスト 川畠成道さん »